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宝石とバレエ その2

皆さま、こんにちは。Karinです。

「宝石×バレエ」として、前回は『眠れる森の美女』に登場する「宝石の精/宝石の踊り」について浅掘りしました。

「バレエに宝石が出てくるなんて知らなかった!」
というお声もいただき、バレエを知ってもらうきったけにはなれたかなと自己満足しております。

「今度、宝石の精の踊り(宝石のバリエーション)を踊ります」というバレリーナ・バレエダンサーにとって、自分の宝石を手に入れてみようというキッカケにもなれていたら、それはもう本望です。

今回は予告通り宝石そのものをバレエ=舞踊にしちゃった作品を紹介します。

◆宝石×バレエ=『Jewels』

はい、宝石がそのままバレエになったのが、『Jewels』です。
そして、こちらは制作過程からとっても宝石との関わりが強い作品なんです。

まずはどんなバレエなのかをさらっと。

『Jewels(ジュエルズ)』は、音楽を視覚化する振付家ジョージ・バランシンによってつくられたストーリーのないバレエです。
宝石中の宝石、THE宝石! である「エメラルド・ルビー・ダイヤモンド」がそのまま登場します。

「エメラルド」はフォーレの曲でロマンチックにフランスを、
「ルビー」はストラヴィンスキーの曲でジャジーにアメリカを、
そして
「ダイヤモンド」はチャイコフスキーの曲でシンフォニックにロシアを
表現しています。

バランシンによってつくられたバレエ団が、ニューヨーク・シティ・バレエ団(NYCB)です。
このニューヨーク・シティ・バレエ団によって、1967年に初演されました。

『Jewels』は「ネオ・クラシックバレエ」のひとつです。
「ネオ」というのは「新しい」という意味。

白鳥の湖や眠れる森の美女と同じ、バレエのテクニックを使っているけど、それらのような物語性がなく、セリフのない演劇・無声劇の要素がなく、音楽を中心に物語やメッセージを抽象的・象徴的につくられたバレエです。

「あの人はダレ?何者?!」とか、「え、何が起こってるの??」とか展開についていくことに振り回されないので、気楽に美しいバレエの世界を楽しめるかもしれません。
そして、いろいろなバレエが一度に観られる作品で、どの場面が好きかで、どんな系統のバレエが好みなのかがわかる作品でもありますよ。

◆2人の偉大な男の出会い

このバレエは、
ジョージ・バランシン

クロード・アーペル
という2人の偉大な男の出会いによって生まれました。

1人はジョージ・バランシン。
20世紀を代表する大振付家です。
ロシア・サンクトペテルブルクに生まれ、バレエ学校を卒業した後、マリインスキー劇場でバレエダンサーとしてのキャリアをスタートさせます。
その後、バレエ・リュス、デンマーク王立バレエのバレエマスターを経て、アメリカにバレエ団を設立するために渡米しました。1933年のことです。

そして、もう1人はクロード・アーペル。
「ミステリー・セッティング」で有名なハイジュエリーメゾン、グランサンクのひとつ、あの
“ヴァンクリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)”
のアーペルです!
パリで生まれ育ったブランドをニューヨークに出店したのがクロードです。
1931年のことだそうです。

この2人が同じ時期にニューヨークに渡らなければ、そして2人の出会いがなければ、生まれなかったのが『Jewels-ジュエルズ』なのです。

まぁ、ハイジュエラーのショーウィンドウに飾られる宝石たちに魅せられたバランシンが店内に招き入れられたのは、バランシンだからではなく、ウィンドウの前を行ったり来たりする不審者として警戒されてのことだったようですが笑

ハイジュエラーのウィンドウ前をウロウロ…身に覚えがあります。ナカニハイルユウキハナイカラ…
声、、かけられます。にこやかに。
営業というより、防犯なのでしょう(-“-;)

◆バレエを宝石に

「音楽と身体表現であるダンスを通して宝石を観る」のがバレエ『Jewels-ジュエルズ』なら、その逆も。
ヴァンクリーフ&アーペルは、バレリーナモチーフのジュエリーを1940年代から発表しています。

Van Cleef & Arpels 公式チャンネルより
Ballerina clips by Van Cleef & Arpels from “The Spirit of Beauty” exhibition
https://youtu.be/-7_a_oUn1TY

ダンサーの滑らかなライン、チュチュの動き、そして、コスチュームの煌びやかさが見事に表現されています。
もう、「美しい」としか言いようがないジュエリー、美術品です!

◆相乗効果

2回にわたってお送りしました「宝石×バレエ」 いかがでしたか?
宝石に魅力された芸術家・クリエイターはバランシンだけではないはずです。
長い長い年月を経て美しい結晶になった鉱物を、採掘する人がいて、美しさを最大限に発揮するためにカットして研磨する人がいて、宝石の姿になります。

そのままでも十分完成されているものが、他のものと掛け合わされて、化学反応を起こすように新しい魅力を放つ。
そんな相乗効果を感じながら、宝石を、そしてバレエも、楽しみたいと思います。

そして、また違った「宝石×○○」を探してシェアしたいと思います!!
では、また。

おススメ映像はこちら
★ニューヨークシティバレエ団
(公式チャンネル https://www.youtube.com/user/newyorkcityballet より)
まずは本家。プロモーション。
https://youtu.be/JUc66x5vl_k

★ロイヤルオペラハウス(英国ロイヤルバレエ団)
(公式チャンネルhttps://www.youtube.com/user/RoyalOperaHouse より)
https://youtu.be/q7ARFCFOyf0
こちらもプロモーション。
これとは別にリハーサルや衣装作製についての動画もありますよ〜

★マリインスキー劇場バレエ団(ロシア)
こちらは「EuroArtsChannel(https://www.youtube.com/user/EuroArtsChannel)」よりダイヤモンド
https://youtu.be/8ArLbpD38sc
エメラルド・ルビーもありますよ。

★パリ・オペラ座
(公式チャンネルhttps://www.youtube.com/user/operanationaldeparis より)
エメラルドの抜粋。
https://youtu.be/7MAMqMI6Yoo
衣裳・装置はクリスチャン・ラクロワだそうです。

各国のバレエ団がレパートリーの一つとして上演しています。映像化されているものもありますから、いろいろ見比べるのもまたオツな楽しみ方かと。
あ、5/19(日)21:00〜Eテレ「クラシック音楽館」で「NHKバレエの饗宴2019」が放送されますよー。日本のダンサーたちの活躍もぜひご覧あれ。

この記事を書いた人:Karin 

プロフィール: 宝石好きの端くれ。